X:\

20070721

投稿者: entasan @ 02:50

◇ある寄稿

◇ユビキタス・コンピューティングにより情報化された公共建築のイメージとして、JRお茶の水駅を中心とした市街地をフィールドとして取りあげ、お茶の水固有の地域性や訪れる人々の特徴などから、建築と都市空間を「より便利に楽しく」演出するシステムの提案を行った。
 特に、ここでは高齢者や障害者、子どもなどの社会的弱者をサポートする「安全・安心」のための機能やシステムはすでに整っていることを前提とし、「楽しい」や「便利」といった観点を重視した。また、公共建築が担うべき重要な役割のひとつとして、人と人とを繋ぎ、コミュニティを形成するための場として機能することもテーマとした。
 なお、この取り組みは早稲田大学渡辺仁史研究室の学生らと研究会形式で進められ、2007年5月23日に行われた「第30回学生設計優秀作品展」において発表が行われた。

 現在のお茶の水駅周辺市街地の特徴は、病院が多いこと、お茶の水駅を最寄りとする大学が多いことによる学生街としての色合いを持つこと、音楽や楽器の街であること、神保町や秋葉原につながる趣味の町として特徴的な店舗が多いこと、これらの理由から若年者から高齢者まで幅広い年齢層が訪れること、などが挙げられた。また、JR中央線、総武線、東京メトロ千代田線、丸の内線が交差し、都内でも有数の交通の要衝となっている。駅からはバスによる交通網も利用できる。また、歴史的な背景としては、中世においては武家屋敷街として位置づけられ、近代においては近代医療が発祥した町としても知られている。
 これらの背景を元にフィールドワークを重ね、システムの提案を行った。ここで提出された5つの案は、それぞれ「わかさぎ釣り」「ウォークするー」「音楽直売所」「蔵出しフェイバリット」「おけいこカプセル」という愛称がつけられた。ここではその中から「わかさぎ釣り」と「音楽直売所」について取りあげ、解説を行う。

「わかさぎ釣り」
 駅のホームや街角に設けられた音楽配信のためのインターフェースに、携帯電話などの端末を近づけることで音楽を聴くことができるというシステムである(図1)。情報配信インターフェースは主に床面に設置され、利用者はその周辺を取り囲んでうつむきがちに端末を近づける行為が、わかさぎを釣る様子に似ていることからこの愛称が付けられた。
このように、同じ姿勢を共有する間柄というのは、たとえ他人同士であっても互いに親近感を感じあえるものである。このことはアニメーションの演出手法として知られているが、現実の人間関係においても援用しようという試みである。

「音楽直売所」
 お茶の水は、音楽を聴くことだけではなく、音楽を作ることにも関心のある来訪者がかなり多く来訪することから、彼らの作曲した楽曲を広く世間に公開する仕組みを街が用意してもいいのではないか、という提案である(図2)。街の中の様々なシーンで聞こえてくる音楽を、インディーズミュージシャンらの音楽に置き換え、街ぐるみで彼らの活動を支援しようというものである。
音楽は人間の潜在意識に訴えかけるものでもあり、同じような楽曲を好む人たちが無意識的に同じような場所に集まるようなことになれば、そこにコミュニティが形成されるきっかけとなるであろう。

 他の3つの提案については、別添の資料に詳しいので参照していただきたい。まとめると、公共建築におけるユビキタス・コンピューティングの活用方法としては、既存の配信情報をリッチコンテンツ化、オンデマンド化するだけではなく、情報化によって人と人の繋がりを演出したり強化したりすることにも着眼しなければならない。特に空間や時間による制約に拘束されないICTの特長を生かし、ICT無しでは実現し得なかったであろう人と人とのネットワーク作りに寄与するようなシステム作りが求められる。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://bsterisk.s5.xrea.com/mt/mt-tb.cgi/72

コメントを投稿

いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。

Ads. by XREA

Latest 10 Articles

最新10記事

Archives

過去の記事